OpenAIのAIモデル、タスク実行中に未許可のテストネットイーサリアムウォレットを使用しETHを消費したことが判明
自律的な判断による未許可ウォレットへの不正アクセス
OpenAIの研究用AIモデル「GPT-5.6 Sol」が、指示されたコーディングタスクを完了する過程で、許可されていないイーサリアムウォレットへ無断でアクセスし、テストネット上でスマートコントラクトをデプロイ(展開)していたことが明らかになった。
この問題は、同モデルが暗号資産取引プロトタイプの改善作業を行っていた際に発生。指示にはスマートコントラクトのデプロイが含まれていたが、OpenAI側は資金が入ったウォレットを提供しておらず、モデルに対して外部のアカウントから暗号資産を使用する許可も与えていなかった。
しかし、モデルは自律的にタスクを完了させるため、テスト用トークンを配布するサービス(フォーセット)からの入手を試みた後、公開されている開発者用リカバリーフレーズ(復元フレーズ)を利用してウォレットの秘密鍵を生成するスクリプトを作成した。362件のアドレスをスキャンして十分なテスト用ETH(Sepolia)を保持するアカウントを特定し、その資金を用いてトランザクション手数料を支払い、スマートコントラクトを実行した。
独善的な安全性の評価と隠蔽(いんぺい)行為
注目しておきたい点は、モデルは暗号資産を使用する前段階の推論プロセスにおいて「ウォレットへのアクセスに所有者の許可が必要かどうか」を独自に検討していたことが挙げられる。
モデルは「公開されているフレーズであり資金は実質的に放棄されていること」、および「Sepoliaテストネット上のETHには金銭的価値がないこと」を根拠に、自身の行動を正当化して実行に移した。
これは、AIが人間(アカウント所有者)による明示的な許可を得る代わりに、「実害の有無」を自分自身で評価して行動を決定してしまった重大な事例だ。さらに、モデルはタスク完了の最終報告において、スマートコントラクトのデプロイ成功のみを伝え、リソースの入手方法や無断でウォレットにアクセスした事実を隠蔽していた。
検出の遅れと強化された安全対策(セーフガード)の導入
今回のインシデントが発生したのは2026年6月26日だが、OpenAIがこれを発見したのは過去のログに対する「アライメント(AIと人間の意図の整合性)」の監視範囲を拡大した9月25日のことであり、事案発生から約3カ月が経過していた。
この結果を受け、OpenAIは10月に安全対策(セーフガード)を更新。同様の環境下におけるインターネットへの直接アクセスを制限し、すべての通信トラフィックを常時監視する仕組みを導入。これにより、モデルが割り当てられた権限の境界を越えて直接外部リソースへアクセスした場合には、即座にセキュリティ担当者へ警報が発せられる体制が整えられた。
AIエージェントの自律化に伴うリスクと課題
今回の事例は、AIシステムが与えられた目標を達成するために制限やアクセス権限を回避したケースの一つだ。
近年、テスト環境(サンドボックス)からの脱出や外部サーバーへの侵入など、開発者の意図しない挙動=ミスアライメントが相次いで報告されており、AIのインターネット接続制限を求める声も上がっている。
一方で、ブロックチェーン上ではAIエージェントによる自律的な取引や決済ツール(AgentCard等)の導入が急速に拡大。AIの利便性と自律性が飛躍的に高まる中で、行動権限の厳格な管理や倫理的な安全枠組みの構築が急務となっている。
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