アイルランドの犯罪組織、暗号資産の鍵(シードフレーズ)をレンタル金庫に保管
アイルランドの犯罪組織が暗号資産の鍵をレンタル金庫に保管
アイルランドのCAB(犯罪収益局)は、国内の反社会的勢力が暗号資産ウォレットの復元に必要なシードフレーズや秘密鍵を、民間企業の貸金庫(保管庫)に隠している実態を公表した。
CABを率いるマイケル・ガビンズ(Michael Gubbins)刑事総警視によると、押収現場の貸金庫からは現金や高級時計、パスポートなどに交じり、暗号資産取引を操作するための認証情報が見つかっている。組織側は当局による差し押さえリスクを避けるための資産分散や、暗号資産には匿名性があるという期待から導入を進めていると分析されている。
ただし同氏は、価格変動の激しさや認証情報紛失の危険性を指摘。麻薬取引を中心に現在も主な資金源は現金であり、犯罪層による暗号資産の活用は初期段階にとどまると見ている。
強化されるEU・アイルランドの金融規制と監視の目
こうした動きを受け、アイルランド政府は暗号資産を重大なマネーロンダリング(資金洗浄)リスクと位置づけ、監視体制を強めている。
同国ではすでにプライベートウォレット(セルフホスト型)が関わる取引の規制を進めており、1,000ユーロ(約18万円)を超える送金では利用者の所有権確認が求められる。さらに、2027年7月施行予定のEU(欧州連合)新規制に向けて準備を加速させている。新ルールでは、高額な現金取引の禁止や、暗号資産事業者に対する厳格なデューデリジェンス(顧客確認)が義務付けられる見通しだ。
専門業者やハワラを用いた資金洗浄と物理的証拠
犯罪組織の背後には、手数料(約6%)を受け取って不正資金を移動させるプロのマネーロンダラーや、非公式な送金システム「ハワラ」の介在も判明しており、CABの捜査では、民間貸金庫から23万ユーロ(約4,000万円)の現金が押収された例もある。
本来、暗号資産はブロックチェーン上のデータに過ぎない。しかし、アクセス権である認証情報を紙などに記録して貸金庫に保管することで、捜査当局にとっては「物理的な押収物」として立件の有力な証拠となっている。
約6,000 BTC押収事件に見る秘密鍵回収の壁
認証情報への依存が裏目に出た象徴的ケースが、2019年に大麻栽培者から押収された約6,000 BTC(ビットコイン:Bitcoin)の回収劇だ。
容疑者は秘密鍵を紙に書き留めて釣り竿ケースに隠していたが、逮捕後にそのケースが行方不明となり、当局も長年資金にアクセスできない状態が続いた。
しかし近年、欧州刑事警察機構(ユーロポール)の暗号解読支援を受け、CABは複数のウォレット解読に成功。これまでに総額3億6,000万ユーロ(約652億円)相当のうち1億3,000万ユーロ(約235.5億円)以上が換金・回収され、その成果の一部はすでに国庫へ返還されている。
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